2026.07.02

GitLab AIハッカソン2026に学ぶ!開発現場で生きるAIフローとエージェントの作り方

佐藤梨花
SB C&S株式会社 ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第2技術部 2課
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はじめに

こんにちは。SB C&Sの佐藤です。

今回は、GitLabが開催した「GitLab AIハッカソン2026」の受賞結果をもとに、GitLab Duo Agent Platformでどのようなフローやエージェントを実現できるのかを整理します。
ポイントは、「単にAIエージェントを作れることではない」ということです。GitLabの強みは、フローやエージェントを柔軟に構築できることに加えて、ソースコード、マージリクエスト、CI/CD、セキュリティ、ドキュメントといったプロジェクト全体の情報を活かして動かせる点にあります。
今回のハッカソンは、まさにその可能性を具体的にした取り組みでした!受賞作品を見ると、AIを単なるチャットやコード補完にとどめず、実際の開発フローに組み込む方向へ進んでいることが分かります。
受賞作品の概要説明も行っていきますので、ぜひ最後までご覧ください!

GitLab AIハッカソン2026の概要

GitLab AIハッカソン2026は、GitLab Duo Agent Platformを使って、実際に役立つAIエージェントやフローを構築するイベントとして開催されました。 開催期間は2026年2月9日から3月25日までで、Google CloudとAnthropicがコスポンサーとして参加しています。

このイベントで印象的なのは、その規模です。
約7,000人の開発者が参加し、600以上のAIエージェントとフローが構築されました。限られた一部の先進ユーザーによる試みではなく、多くの開発者がGitLab上で実際にエージェントやフローを形にしたことが分かります。
また、審査は技術的完成度、デザイン、潜在的インパクト、アイデアの質という4つの観点で行われました。単にAIを使ったというだけでなく、現場で使える完成度や実用性が重視されていたことがうかがえます。

受賞作品から見えてくる傾向

受賞作品を見ていくと、テーマは決してコード生成だけに集中していないことが分かります。むしろ、ソフトウェア開発ライフサイクル全体にまたがる課題に対して、AIエージェントやフローをどう適用するかが中心になっています。さすがGitLab主催のハッカソンです!
例えば、属人化した知識の継承を扱うもの、セキュリティレビューや脆弱性対応を扱うもの、変更の影響範囲を可視化するもの、コードとドキュメントのずれを埋めるものなど、対象領域はとても幅広くなっています。

個人的にここはとても重要なポイントだと感じています。
生成AIの話題になると、どうしてもコード生成に注目が集まりがちです。しかし実際の開発現場では、レビュー、確認、調査、文書更新、セキュリティ対応、運用調整といった周辺業務が、開発速度や品質を大きく左右します。


次章では受賞作品の概要を紹介していきます。AIを開発者の補助ツールとして使うだけでなく、開発フローそのものの一部として組み込む具体的方向性が見えてきます!

受賞作品

グランプリ受賞作品:LORE

グランプリを受賞したLOREは、Living Organizational Record Engineの略称で、組織知識の継承をテーマにしたプロジェクトです。 ベテランエンジニアの退職や異動によって、設計意図や過去の判断が失われてしまうことは珍しくありません。ドキュメントが十分に残っていない場合、その影響はさらに大きくなります。

LOREは、複数のエージェントを使い分けながら質問を適切に振り分け、ナレッジグラフやダッシュボードも活用して、組織知識を蓄積しやすくする構成になっています。この作品が評価された背景には、技術的な新しさだけでなく、現場で実際に困りやすい課題を正面から扱っている点がありました。

AI活用というと、まず実装支援やコード生成が注目されますが、実際には「なぜこの構成なのか」「過去に何を理由にこの判断をしたのか」を追えないことも大きな損失です
LOREは、その問題に対してGitLab上の情報を活かしながらアプローチできる可能性を見出しました。審査員コメントにもありましたが、1つのプラットフォーム内のツールの域を超えた、1つの製品として成立し得るレベルであると感じます。

LORE.png

Google Cloud賞 受賞作品:Gitdefender

Gitdefenderは、コードレビューのワークフローの中でセキュリティ上の問題を発見し、修正内容を記述し、コードレビューを自動でオープンする仕組みです。

ここで注目したいのは、セキュリティを別工程として切り離していない点です。
開発現場では、脆弱性対応が後工程に回るほど、手戻りも調整コストも大きくなります。一方で、開発者から見ると、セキュリティ確認が開発を止める要因になってしまうこともあります。前回のブログでも言及している通り、セキュリティをいかに開発フローに根付かせるかというのは大きなポイントです。

Gitdefenderのように、レビューの流れの中でセキュリティ上の問題を見つけ、修正提案まで含めて扱える形にすれば、セキュリティ対応を開発フローの中に自然に組み込みやすくなります。
単にAIが賢いという話ではなく、どのタイミングで、どの業務の流れに組み込むかが重要であることを表しています。Gitdefender.png

Anthropic賞 受賞作品:GraphDev

GraphDevは、コードの依存関係を可視化し、システムが時間とともにどう変化したかを理解しやすくするプロジェクトです。

大規模開発では、ある変更がどこへ影響するのかを把握するだけでも大きな負担になります。特に長く運用されてきたシステムでは、見た目には小さな変更でも、思わぬ範囲へ影響が及ぶことがあります。
GraphDevの価値は、単に図を描くことではなく、変更前に影響範囲を把握しやすくすることで、設計判断やレビューの精度向上につながる点にあります。
開発速度を落とさずに品質を保つための支援として、かなり実務的なアプローチだと感じました。GraphDev.png

Anthropic賞 準グランプリ受賞作品:DocSync

DocSyncは、コードとドキュメントのずれを検知し、確信度が高ければコードレビューをオープンし、確信度が十分でなければ人間が確認するためのイシューを作成するプロジェクトです。

この考え方はとても現実的です。
AIにすべてを自動確定させるのではなく、確信度に応じて自動化と人手確認を分ける設計になっているためです。
ドキュメント整備は重要だと分かっていても、日々の開発の中では後回しになりがちです。結果として、コードは更新されているのに手順書や説明資料が古いまま残ることがあります。
DocSyncのような仕組みは、このような「小さくて見落とされがちながちでも少なくない影響を及ぼす課題」に効果的です!DocSync.png

フローやエージェントを自由に作れることが重要な理由

ここまで見てきた受賞作品は、いずれも「AIが何かを答える」だけでは終わらず、実際のワークフローの中に入り込み、イベントに応じて動き、必要に応じてコードレビューやイシューの作成まで行っています。
繰り返しになりますが、単発の質問応答だけでは解決しない開発現場の課題に対して、この点はとても重要であると言えます。例えば、レビュー時にセキュリティの確認をしたい、変更の影響範囲を知りたい、コード変更に応じてドキュメントの更新要否を判断したい、といった課題は、単にチャットで質問するだけでは完結しません。

必要なのは、対象業務の流れに沿って処理を分担し、適切なタイミングで判断や提案を返すことです。そのためには、フローを構成し、必要な役割をエージェントとして分けて設計できることが重要になります。
言い換えると、AIを便利な会話相手として使う段階から、実務を前に進める役割の一部として使う段階へ進めるために、フローとエージェントを自由に構成できることが重要になります。

そしてその基盤としてGitLabを選定することにも重要なポイントがあります!
それは、GitLabがワンプラットフォームであることです。ソースコード管理、イシュー、マージリクエスト、CI/CD、セキュリティ、ドキュメントに関わる情報が分散せず、開発ライフサイクル(GitLab)の中で繋がっています。そのため、エージェントやフローが利用できるコンテキストも自然と広く、深くなるのです。

例えば、単独のAIツールであればコード断片だけを見て判断する場面が多くなります。しかしGitLab上で動くエージェントであれば、変更差分、関連イシュー、レビュー状況、パイプライン結果、セキュリティイベントなど、周辺情報と合わせて動作させやすくなります。 これにより、単なる一般論ではなく、プロジェクトに即した支援が期待できます。

さらに、GitLab Duo Agent PlatformにはAIカタログが用意されいます!
GitLabチームやコミュニティが作成したエージェントやフローを見つけたり、カスタムエージェントやカスタムフローを作成して共有したりできます。AIカタログにより個人が一度作って終わるのではなくチームや組織で再利用しやすい形にできるため、この点も実務上重要です。

また、バージョン履歴やバージョンのピン留めといった仕組みがあるため、動作の安定性を保ちながら運用しやすい点も見逃せません。
AIの振る舞いは便利な一方で、意図しない変更が現場の運用に影響すると困る場面があります。こうした運用面まで考慮されていることは、エンタープライズ利用を考える上で大きな意味があります。

技術者視点で見たメリットと注意点

技術者視点で見ると、GitLabでフローやエージェントを作るメリットは明らかです。
まずコードだけでなく、レビュー、パイプライン、セキュリティ、ドキュメントまで含めて扱えるため、実際の開発フローに近い形で自動化しやすい点があります。 またチームで共有しやすく、継続的に改善しやすい仕組みがあるため、個人の便利ツールで終わりにくいことも大きなポイントです。

既存のフローやエージェント(GitLabが公式作成したものも含む)をコピーし、一部カスタムして独自のものが作成できるというのも、個人的にとても気に入っているポイントです。

一方で、注意点もあります。
フローやエージェントを自由に作れるからといって、何でも自動化すればよいわけではありません。 どの業務を任せるのか、どこから先は人間が判断するのか、誤判定が起きたときにどう扱うのか、といった設計は欠かせません。
特に、セキュリティや本番運用に関わる処理では、AIの提案をそのまま通すのではなく、人間の確認を前提にした設計が重要です。受賞作の一つであるDocSyncのように、確信度に応じて処理を分ける考え方はその良い例だと思います。

また、導入にあたっては利用条件や権限、利用可能な機能範囲などの確認も必要です。
便利そうだからすぐ全面導入、ではなく、まずは効果が測りやすい業務から始めるのが現実的です。

まとめ

今回のハッカソン作品は、特別なチームだけが実現できる遠い未来の話ではありません! むしろ「現場で日々感じている不便や手戻りを出発点にして、フローやエージェントをどう設計すれば効果が出るかを感じることのできる貴重な事例集」といっても過言ではありません。

例えば、次のようなテーマは多くの現場で検討しやすいのではないでしょうか。

  • コード変更時に関連ドキュメントの更新要否を確認するフロー
  • マージリクエスト作成時にレビュー観点を自動整理するエージェント
  • CI/CD失敗時にログを要約し、原因候補と対処案を提示するフロー
  • 脆弱性検出時に影響範囲と修正候補をまとめるエージェント
  • 過去のイシューやマージリクエストをもとに、類似事例を探すナレッジ支援フロー

いずれも、現場では決して珍しくない課題です。そして、こうした課題は単独のチャットよりも、プロジェクトの文脈を使って動くフローやエージェントの方が適している場合が多くあります。
今回のハッカソンを通して「AIを使うかどうか」ではなく、「どの業務を、どの文脈で、どの程度までフロー化するか」を考える段階に入っているということが強く感じられました。

今回の受賞作品群も、知識継承、セキュリティレビュー、変更影響の可視化、ドキュメント整合性の維持など、実際の開発現場で効果が出やすいテーマに取り組んでいました。
そしてその背景には、フローやエージェントを自由に構成できること、さらにGitLabというワンプラットフォーム上でプロジェクト全体のデータを活かせることがあります!

皆さんの現場でも、まずはレビュー、障害対応、ドキュメント更新、ナレッジ継承など、負荷が高く定型化しやすい業務から見直してみると、GitLabでフローやエージェントを作る意義が見えてくるのではないでしょうか。
是非GitLabと一緒に「次のAI活用」に取り組んでみてください!

関連リンク

ハッカソン結果発表ブログ:https://about.gitlab.com/ja-jp/blog/gitlab-ai-hackathon-2026-meet-the-winners/
GitLab公式ブログ:https://about.gitlab.com/ja-jp/blog/
GitLab Duo 公式ドキュメント:https://docs.gitlab.com/ja-jp/user/gitlab_duo/
DevOps Hub GitLab関連ブログ: /devops-hub/blog/gitlab/

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GitLab特設サイトでは、GitLabの製品情報や トライアル(無償試用版)をお申込みいただけます。 ぜひ、特設サイトをご確認ください。事項を記入いただくことで、資料がダウンロードできます。

この記事の著者:佐藤梨花

SB C&S株式会社 ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第2技術部 2課

勤怠管理システムの開発(使用言語:Java)に約8年間従事。
現在はエンジニア時の経験を活かしたDevOpsやDX推進のプリセールスとして業務に精励しています。


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