顧客のスタイルに合わせたご提案。グローバル・アウトソーシングを提供するコウェルのアジャイル開発現場
DevOps Hubでは、DevOpsを実践している企業のインタビューをお届けしています。第2回は、株式会社コウェルの開発現場について、お話を伺います。
(写真:左から株式会社コウェル 村松篤史氏、臼田歩氏、今井徹氏)
株式会社コウェルは、2007年東京に設立。ベトナム法人を持つ、オフショア開発をコア事業としたグローバル・ITソリューション企業です。
ベトナムオフショア開発やITビジネス・デベロップメントサービス、ウェブソリューション、システムソリューション、AWSインテグレーションなど、多岐に渡る事業を展開しています。
グローバル・アウトソーシング事業として、一気通貫でご提案
──貴社の特色について教えてください。
今井:弊社事業は、オフショア開発事業ではなく、「グローバル・アウトソーシング事業」とご説明しています。開発、テストだけではなく、お客さまの開発現場の上流から入って、要件整理・要件定義からお手伝いさせていただくスタイルが強みです。最近は多くの企業がベトナムを拠点としたオフショア開発を手がけていますが、弊社は日本側に30人規模のPMクラスのエンジニアを配置し、品質・プロジェクトマネジメントの面で強みを発揮できる点が特長です。
また、サーバーサイドの開発から、モバイルアプリ、AWSのインテグレーションまで、一気通貫でお客様のITシステムのご支援をさせていただいています。この点を評価いただき、私どもは多くの年商1,000億超規模のナショナルクライアントさまと、SIerの下請けではなく直接お取引をさせていただいています。
コウェルの事業概要
──今回、開発現場についてお話しいただく、お二方の開発チームではどのような案件を担当されているのでしょうか。
村松:EC系のお客さまの担当や、新規のお客さまへのご提案をしています。具体的にはECのフロントエンド側の商品を並べて購入できる仕組み作りや、EC基幹システムの保守、Amazonとの連携などになります。また大手小売業のお客さまの基幹システムの刷新やECシステムのパッケージ開発プロジェクトのプロジェクトマネジメントもしております。
臼田:私が担当している「Webソリューション課」では、EC系以外のWEBシステム全般と受託型案件を担当しています。DevOpsやアジャイル開発をメインとして掲げ、大規模というよりは比較的速度の速い開発、例えばスマートフォンアプリやBtoCのWEBアプリのプロジェクトが多いです。
試行錯誤して開発を進めていった結果、DevOpsにつながっていた
──貴社の中で、DevOpsの定義はありますか。
臼田:DevOpsは、アジャイルの開発と運用を含めたというか、システムを構築する運用スタイルの総称だと思うのですが、元々DevOpsって意識をしたことはないんです。今メインに担当している案件もアジャイル開発と、AWSの運用面もお任せいただいているプロジェクトですので、まさにDevOpsという形になっているかと思います。
コウェル 技術本部 グローバル・エンジニアリング部 Webソリューション課
課長 臼田歩氏
──アジャイル開発やCI/CD、自動化などは、高速開発するためには当たり前の手段なので、特に定義にはこだわっていないということでしょうか。
臼田:そうですね。アジャイル開発自体も、アジャイルを理解する前にそのようなスタイルになっていたんですよね。元々はウォーターフォール型で大規模開発をしていたのですが、それがマッチしなくなってきて、どうしようと試行錯誤して、実践していたものがアジャイルでした。その後で「アジャイル」という言葉に出会って調べてみたら、私たちがやっていることと一緒だなと思いまして。「アジャイル」という言葉は開発のスタイルではなくて、基本概念だと思っているんですね。その概念を理解して、どのように開発プロセスを組んでいくかを考え、実行していった結果、DevOpsになっていたのです。
──アジャイルでの開発の要件定義は、どのように進めているのですか。
臼田:アジャイルについては「要件定義が曖昧でも大丈夫」ですとか、「設計書はなくてもいい」「テストをたくさんしなくても、とりあえずリリースできる」といった誤解をされやすい傾向があるのですが、全くそんなことはないんです。アジャイルの大元の概念は、ユーザーに対してなるべく早くその価値を届ける、それをやるためにはどうするのかということなので、要件定義やテストはもちろん、ある程度はしっかりしている必要がありますね。それを短いスパンで固めていく、つまり精度を落とすのではなくて、粒度を落とすことが大事だと思います。
──開発を進めていく中で、どのような効果や価値が得られましたか。
臼田:アプリの開発案件で、最初はまずウォーターフォール型で大規模なシステムを全部作り、限られたバジェットの中で優先順位付けを行って、アジャイルで少しずつ機能追加をしていきました。当初想定していた規模でのリリースは、スケジュール上難しかったのですが、何が重要か、開発スコープを絞り込むことによって、お客さまの期待値を満たした上でリリースすることができました。
──お客さまのエンゲージメントが、常に生まれている状況を作り出せたということですよね。
臼田:はい。私たちは何が重要だと決めつけることはできる立場にはないのですが、お客さまと本当に必要な機能なのかと話し合ってみると、意外とそこまで重要ではないとわかることがあります。では、その部分は後にしてこれを優先して作る、そこがしっかり握れていればお客さまの満足度をしっかり確保できますし、システムとして本来の姿で提供できるのです。
Jenkinsを活用し、オフショア先とのやり取りを効率化
──アジャイル開発をする上で、CIを導入されているお客さまは、やはり多いのでしょうか。
臼田:100%に近い割合で、CIを導入していますね。やはりアジャイル開発で色々なプラクティスがある中で、最初に入れるのがCIだと思います。ドラスティックなプラクティスもありますけども、CIが一番わかりやすく、尚かつ結果にもつながりやすいと思います。
──CIの導入企業は増えてきているのですね。貴社では、CIをベトナムのオフショアに活用されているとのことですが、どのようなきっかけで使っているのでしょうか。
村松:Jenkinsをメインに使っていますが、使い始めたのは、アプリ開発の際に開発の管理面で苦労をしたことと、プログラミング文化が違うのでそのコントロールをするのにJenkinsに手伝ってもらおうと思ったことがきっかけですね。「このソースの何行目が~」と、日本語が喋れるベトナム側のスタッフと会話はするのですが、量が多くなり効率的ではないので、Jenkinsを試してみようという話になりました。日本とベトナムで同じように開発環境が見えるように設定をして動かすことで、都度会話をしなくてもコミュニケーションができるようになりましたね。自分のやり方を自身で確認して、直していくことで、だいぶ効率がアップしました。
コウェル 技術本部グローバル・エンジニアリング部 ECソリューション課
課長 オフショア開発コンサルタント 村松篤史氏
──現在はどのようにJenkinsを活用されているのでしょうか。
村松:本番にもJenkinsを導入して、デプロイを自動化してソースコード管理をしっかり行っています。アプリですと簡単にはアップデートできないので、慎重に進めたいといった場合に、CIのパーツを使うと非常に楽になりますね。
──バージョン管理ツールはどのようなものを使われていますか。
臼田:GitLabを使っています。アジャイル開発をする上で、GitHubやGitLabのようなソースコードレビューがUIベースで簡単に確認できることが重要ですね。
──CIを導入した結果、どのような効果がありましたか。
臼田:一番わかりやすいのがデプロイです。アプリケーションのデプロイは、今まで30分くらいかかっていたところを、5分くらいまでに短縮できました。あとは、Gitありきの話になってしまいますが、開発チーム・ブランチごとにマージして、それぞれの環境に自動的にアップできるので、デグレードは減りましたね。人的ミスが少なくなり、短縮した時間をレビューの時間に充てて、レビューをよりしっかりすることできるようになりました。
──インフラの自動化などは、進められているのでしょうか。
今井:現状、オンプレからクラウドのマイグレーションが日本でも本格的に起こっており、お客さまからのご依頼が増えております。例えば、データンセンター上のITシステムのAWSへの移行プロジェクトで、AWSのインフラ面とアプリ改修を全部お任せいただくケースです。AWS利用ポリシー/セキュリティーの策定から、CI/CDをトータルでご提案をさせていただくケースもございます。お付き合いの長いお客さまのなかには、オンプレ・データセンターにあった物理サーバーをAWSのEC2に移行して、その後Amazon RDSに移行。その後 AWS Lambdaを使いサーバレス化するという、3世代にわたってシステムを切り替えているお客さまもいらっしゃいます。
お客さまのお悩みをトータルで解決。全てお任せできる存在に
──貴社の今後の展望について教えてください。
今井:お客さまの直面している本当の課題を見つけ出しトータルで解決できる存在でありたいです。今後は、現在の東京とベトナムの拠点に加え国内のニアショア拠点などの検討や、得意なEC系/PHP・JAVA系に加えRubyなども強化し、開発体制を細分化、拡張・強化して、さらにお客さまのスタイル・ニーズにマッチしたアウトソースサービスをご提供していきたいと考えております。
コウェル 経営戦略室 室長 今井徹氏
コウェルさまのお客さまへの付加価値の追求が、結果として効率的な開発につながり、お客さまの満足度を生み出していることが分かりました。お話しいただき、ありがとうございました!
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