【GitLab×AI連載】第1回:AIはソフトウェア開発に何をもたらすのか

皆さんこんにちは。
SB C&Sの佐藤です。
「開発のスピードをもっと上げたい」「レビューやテストにかかる時間を短縮したい」――そんな思いを抱える開発チームは多いのではないでしょうか。そこで注目したいのが、GitLabに搭載されつつあるAI機能です。
この連載では、GitLabに搭載されているAI機能について、ソフトウェア開発にどのような進化をもたらすのかについてご紹介していきます。第1回目となる本記事では、GitLabの基本と、GitLab×AIによってアプリケーション開発にどのような変化が期待できるのかを見ていきましょう。
画像出典:GitLab Blog
GitLabについて
この章ではまず、GitLabの概要と特徴、そこから生まれるメリットを解説します。
AIに関してはまだこの章では触れておりませんが、この部分をしっかり知ることで後半のAI融合についても理解が深まりますので、GitLabについてまだあまりご存知でない場合は是非ご一読ください。
概要
ワンプラットフォームDevSecOpsアプリケーション
名称に「Git」が含まれるようにソースコードのバージョン管理機能はもちろん、プロジェクト管理からCI/CD、セキュリティ管理といったアプリケーションライフサイクル全体をワンプラットフォームでカバーする製品です。
特徴とメリット
GitLabの特徴である【ワンプラットフォーム】――ここからもたらされる「3つの強み」をご紹介します。
1.断片的ツールチェーンを 「単一アプリケーション」に凝縮
ビルドツール、ソースコード管理ツール、課題管理ツール、セキュリティスキャンツール......アプリケーション開発に関わるツールは多岐に渡りますが、ツールの寄せ集めは、設定の重複や権限管理、UIの行き来で開発速度を下げがちです。
GitLabは先ほどのようなツール群を1つのプラットフォームに統合します。それによりコードがコミットされた瞬間からデプロイ、運用、コンプライアンス監査までを「同じ場所」で完了できるため、コンテキストスイッチの削減・保守コストの低減・可観測性の向上が大幅に得られます。
2.Dev→Sec→Ops を自然にシフトレフト
複数の製品で繋ぐ場合、「セキュリティは後段のジョブで実行」「運用は別ダッシュボードで確認」といった溝が生まれがちです。
GitLab では SAST、DAST、Dependency Scanning、IaCスキャンといったセキュリティチェックを単一のYAMLで実行可能なため、脆弱性検出を開発フェーズの早期(=左側)に取り込める のが大きな特徴です。パイプラインにおけるエラーである「テスト失敗」、「脆弱性検出」が同じレポートに並ぶので、開発者がセキュリティを主体的に捉えやすくなります。
3.組織管理もワンプラットフォームで完結
GitLabにはValue Stream AnalyticsやCI/CDパイプラインのメトリクス など、多層的なダッシュボードが最初から組み込まれています。
コミット→マージリクエスト→デプロイ完了までのリードタイムを秒単位で可視化し、ボトルネックを即座に特定できるため、「属人的な判断ではなくデータドリブンでプロセスを改善する」 という文化が自然と根づきます。
さらに組織(開発)管理に関わる機能を同一UI から一元管理できるため、組織が拡大してもカバー可能です。
経営層は経営層向けダッシュボードでKPIを把握しつつ戦略レベルの意思決定、現場は個々のコミットまで現場オペレーション、これらが1つのデータソースで接続されるのが、ワンプラットフォームならではの強みです。
具体的な機能群については過去の連載で10個の機能について紹介させていただいておりますので、是非併せてご覧ください。
GitLabとAIの融合:開発の未来を切り拓く変革の波
この章ではAIがアプリケーション開発にどのような影響を与えるのかという点を、GitLabの得意とする「DevSecOps」「組織管理」という2軸で解説します。
DevSecOps×AI
GitLabはワンプラットフォームでDevSecOps、つまり開発から運用、そしてそれに関わるセキュリティをカバーします。そのためGitLabにAIが加わるということは「DevSecOpsのすべてにAIが加わる」ということであり、開発に関わるメンバー全員がAIを使用できる環境になることを意味しています。
局所的な利用ではなく全体で活用することで、AI駆動的な組織になることが可能です。
以下ではGitLabで実現できるDevSecOpsへのAI導入について、3つの機能を解説します。
1. コードレビューの進化:より迅速で質の高いフィードバック
コードレビューは、品質の高いソフトウェア開発に不可欠なプロセスですが、時間と労力を要する作業でもあります。AIがコードの変更点を解析し、潜在的なバグやコーディング規約からの逸脱を自動的に検出できるようになれば、レビュー担当者の負担は大幅に軽減されます。
・早期の問題発見:AIが静的解析ツールを高度化させ、複雑なロジックのエラーやセキュリティ上の懸念を早期に特定します。
・レビューの質の向上:人間のレビュー担当者は、AIが指摘した箇所だけでなく、より本質的な設計やアーキテクチャの問題に集中できます。
・レビュー時間の短縮:レビュー内容のサマライズ機能により大量のフィードバックを一括で把握を可能とし、レビュー工程の効率化を実現します。
2.CI/CDパイプラインの最適化:よりスマートな自動化
GitLabのCI/CDは、開発からデプロイまでのプロセスを自動化し、開発サイクルを加速します。AIを活用することで、この自動化はさらに強化されます。
・テストの自動化:AIによる単体テスト自動生成によりパイプラインに自動テストを容易に組み込むことが可能になり、回帰バグ検知が強化されます。
・YAMLの自動生成:GitLab独自のCI/CDファイルである「.gitlab-ci.yml」の自動生成や最適化のサポートにより、パイプライン設計に費やす工数を削減します。
・エラー解決の迅速化:CI/CDと連携したトラブルシューティング支援機能により、パイプライン失敗時の原因特定と修正の迅速化します。
3.セキュリティの強化:プロアクティブな脆弱性対策
セキュリティは、ソフトウェア開発における最重要課題の一つです。GitLabにAIが融合されることで、より強固なDevSecOpsの実現が可能になります。
・脆弱性の解説:セキュリティスキャンで検出された脆弱性について、その内容や攻撃者による悪用方法、修正方法を解説する機能により、開発者は脆弱性の把握を容易に行えます。
・脆弱性修正方法の提案:検出された脆弱性に対し、修正のためのコード変更をAIが提案→マージリクエストの自動生成まで行うことで、検出→修正までの流れをAIで完結できます。
・プロンプト脆弱性への対策:自動生成されたコードやメッセージでの機密データの誤送信やプロンプトインジェクションを抑止することで、AI活用とガバナンス要件の両立を支援します。
組織管理×AI
GitLabは 2011年の創設当初から、分散チームが1つのアプリケーション上で計画・開発・運用までワンプラットフォームで協働できる環境を目指しています。
こうした開発思想に基づいて作成されたGitLabの効率化は、実装者目線にとどまりません。DevSecOpsメトリクスに基づいた管理、ROIを可視化するダッシュボード類など、管理者・リーダー層が求めるガバナンスと定量評価の仕組みもGitLabには揃えられています。
ここにAIが組み込まれることで、開発者と管理者双方の生産性と可視性をさらに底上げしています。
以下では組織管理とアナライズの観点で3つのAI機能を解説します。
1.サマライズ機能による効率化:
長文になりがちな課題の説明やコメントの履歴を、AIが自動的に要約します。これにより、課題の全体像や議論のポイントを短時間で把握することが可能になり、関連情報の確認にかかる時間を大幅に削減できます。
新規メンバーがプロジェクトに参画する際や、久しぶりに課題を再確認する際にも、迅速な状況把握を助け、チーム全体の生産性向上に貢献します。
2.メッセージの自動生成:
課題の状況や変更に基づいて、AIが定型的なメッセージの草案を自動生成します。例えば、Issuesの登録では数行書くだけで、背景・目的・完了条件を含む詳細説明へ展開が可能です。またマージリクエストやコミットメッセージも、変更点や要点を理解し、一貫性を持ったメッセージを作成します。
これによりコミュニケーションの手間を省き、人的ミスを減らします。
3.各種ダッシュボードによる可視化:
GitLabでは開発に関わる様々な保持データをダッシュボード機能でアナライズ可能です。そしてこのダッシュボードに対しAIが分析を行うことで、課題の進捗状況、担当者の負荷、ボトルネックとなっている可能性のある箇所などを割り出し、分かりやすい表示を実現します。これによりプロジェクトマネージャーやチームリーダーは、GitLabという統一された指標で状況を共有し、意思決定を行うことが可能になります。
また「AI Impact Dashboard」ではAI投資の効果を定量的にモニタリング可能なため、AIに対するKPIの確認もGitLab内で行えます。
まとめ
GitLab×AI は「単なる機能追加/更新」の進化ではありません。
従来の手法ではプラン → コーディング → テスト → セキュリティ → デリバリー → アナライズというように、開発ライフサイクルは工程ごとに分断されてきました。しかしGitLabはこれらの工程を1つのプラットフォームで実現しています。
ここにAIが加わるということは「開発ライフサイクル全体への統一されたAIの導入」となり、開発プロセスそのものを再設計するレベルで革新をもたらします。
実際にGitLabにAIが融合することで、従来の 「人力でボトルネックを探し、解消する」 開発ライフサイクルが 「AIが自律的、且つリアルタイムに検知し、提案し、測定する」開発ライフサイクルへと置き換わりつつあります。
ここで重要なのは、「サイクルの一部だけ」「バラバラのツールごとにそれぞれAIを導入」した場合に生じるデメリットです。ツール間でコンテキストが途切れるためAIが十分な情報を参照できず、提案精度が下がる/重複作業が発生する。統合のたびにSSOや権限、監査ログ、データ保護設定を個別に調整する運用負荷が増える。ROIや品質メトリクスも断片化し、「どのAIがどれだけ効果を出したか」 を可視化できない――結果、機能追加のはずが逆に複雑性とコストを引き上げてしまう恐れがあります。
GitLabはもともと 「ワンプラットフォーム」 を核に設計されてきたため、AIを一か所に集中させることで情報の保持も容易ですし、セキュリティやガバナンス設定も一元化可能です。
開発者は日々各工程でAIの支援を受け、管理者は同じ画面でROIやコンプライアンス指標を即座に確認できる――つまり「GitLabだからこそAIの力を最大限発揮できる」のです。こうして個々の機能強化に留まらず、組織全体の開発フローがAIネイティブへ進化し、スピード・品質・可視化を同時に押し上げる。これが「GitLab×AI」がもたらす本質的な価値です。
次回以降は具体的なGitLab×AIの機能をカテゴリ別に紹介していきます。こちらをご覧いただくことで「開発にAIを取り入れる」ことで起こる変化がより具体的に認識できると思われますので、是非併せてご覧ください。
関連リンク
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この記事の著者:佐藤梨花
勤怠管理システムの開発(使用言語:Java)に約8年間従事。
現在はエンジニア時の経験を活かしたDevOpsやDX推進のプリセールスとして業務に精励しています。

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