みなさん、こんにちは。
SB C&S 技術担当の河村です。
昨今、DXの推進により企業のIT化が進む中で、データを活用するため、ストレージ技術の向上が期待されています。そんな中、昨年末にNetAppから最新バージョンであるONTAP 9.8がリリースされました。
OSバージョンアップのライフサイクルが変更されたことにより、1年ぶりのリリースとなったONTAP 9.8ですが、今回はバージョンアップにより搭載された様々な新機能のうち、特にご紹介したい機能にフォーカスして解説したいと思います。
※本ブログは、新機能についての概要をまとめたものになります。
詳細が気になる方は、別途弊社へお問い合わせください。
昨年末に開催されたNetApp最大のカンファレンスイベントであるNetApp Insight 2020 Digitalや先日開催されたNetApp Insight Japan でもONTAP 9.8についてのセッションが多く実施されていました。
各イベントの参加レポートについては、以下の記事をご参照ください。
「NetApp Insight 2020 Digital 参加レポート」
「NetApp Insight Japan 参加レポート」
新しいプラットフォーム |
まずは、ONTAP 9.8が利用可能なプラットフォームから見ていきます。
従来までのプラットフォームでは、AFFシリーズが「フラッシュストレージ」、FASシリーズが「ハイブリッドストレージ」と区別していましたが、今後はワークロードやユースケースといった部分にフォーカスして、ユーザーに最適なシステムを提案することを重視していくようです。
そのため、新しいプラットフォームがリリースされたタイミングで、AFFシリーズは「優れたパフォーマンスとレイテンシ」、FASシリーズは「容量とパフォーマンスのバランス」という形で区別しています。
・FASシリーズ
・AFFシリーズ
・ASAシリーズ
上記全ての製品でONTAP 9.8の利用が可能です。
新しくリリースされた赤文字表記されているプラットフォームについては、ONTAP 9.8からの対応となっているのでご注意ください。
FASシリーズで新しくリリースされたFAS500fは、FASシリーズ初のオールフラッシュストレージです。
QLC SSDを用いることにより、オールフラッシュで大容量かつGB単価が重視されたモデルになっています。
このことからもNetAppがワークロードやユースケース重視にシフトしてきていることが伺えるかと思います。
ONTAP S3 |
ONTAPといえば1台のストレージでNASとSANの両方を利用できるユニファイドストレージという大きな特長がありますが、ONTAP 9.8からは、ONTAP S3機能としてオブジェクトストレージプロトコルであるS3に対応しました。
オブジェクトストレージとは、ディレクトリ構造で管理する従来のファイルストレージとは異なり、データをオブジェクトという単位で管理することにより、一度に大量のデータを管理することに適したスケールアウト型のストレージです。
ONTAP 9.7では、Tech Previewの機能としてCLIでの設定のみが提供されていましたが、ONTAP 9.8から正式リリースとなり、CLIに加え管理GUIであるONTAP System Managerからも設定ができるようになりました。
ONTAP S3が利用できるプラットフォームは以下です。
ONTAP S3について、詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
「NASだけじゃないっ!ONTAPが実現するオブジェクトストレージ『ONTAP S3』!!」
「ONTAPで実現するオブジェクトストレージ『ONTAP S3』設定方法」
ONTAP 9.8では、これまでパブリッククラウドで提供されるオブジェクトストレージや、Storage GRIDへの階層化を実現していたFabricPoolの階層化先として、S3を設定したONTAPが選択できるようになりました。
こちらについても、過去の記事で詳しく解説していますので、気になる方は是非ご覧いただければと思います。
「FabricPool ~ONTAP 9.8でのアップデート内容紹介~」
「ONTAP S3を用いたFabricPoolの設定」
ONTAP S3はONTAP 9.8で無償提供される機能です。
オブジェクトストレージに興味があるものの、自社のルールなどによりパブリッククラウドを利用できなかったでも、ONTAPが搭載された既存のNetAppストレージさえあれば、オブジェクトストレージを利用できるようになったという点は、非常に大きなメリットかと思います。
FabricPool |
続いては、ONTAP S3の解説でも少し触れたFabricPoolについてのアップデート情報です。
FabricPoolの階層化先としてS3を設定したONTAPを選択できるようになったこと以外にも注目したいアップデートがあります。
ONTAP 9.7以前では、FabricPoolがサポートされる製品は、AFFシリーズかSSDアグリゲートで構成されるONTAP搭載のストレージのみでしたが、ONTAP 9.8からHDDアグリゲートで構成されるストレージでもサポートされることになりました。
これにより、FASシリーズでもFabricPoolを利用したハイブリッドクラウドによるコストの最適化ができるようになります。
FabricPoolが利用できるプラットフォームは以下です。
FabricPoolについて、詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
SnapMirror Business Continuity(SM-BC) |
SnapMirrorは、同一クラスタ内または、異なるクラスタ間でデータをレプリケーションする機能です。
バックアップやDR目的のため、同期先のボリュームでは、書き込みが禁止され、Active-Standby構成で動作する機能となっています。
ONTAP 9.8からTech Previewの機能として新しく実装されたSnapMirror Business Continuity(以下:SM-BC)では、同期先からでも書き込みが可能なActive-Active構成を実現しました。
また、ONTAP 9.7以前のSnapMirrorでは、障害時の切り替えは手動による作業が必要でしたが、ONTAP 9.8では、ONTAP Mediatorという各クラスタ間の整合性を管理するためのサーバを用意することで、障害時の自動フェイルオーバーが可能となり、ビジネスの継続性が格段に上昇しました。
OTNAP Mediatorは物理または仮想のLinuxサーバを利用します。
・正常時
・障害時
同期するボリュームは、Consistency Group(以下:CG)というグループで管理します。
CGの最大数は5個、CG内の最大ボリューム数は12個となっており、同時に60個のボリュームに対してリレーションを持つことができます。
データアクセスの切り替えはボリューム単位でできるため、データアクセスの分散が柔軟に行えるのもメリットかと思います。
SM-BCはAFFシリーズでSANを利用する場合、またはASAシリーズでのみサポートされています。
FASシリーズでは未サポートなので、ご注意ください。
SM-BCでは、同期元と同期先でストレージモデルが異なっている場合でも構成することができます。
プライマリ側をハイエンド、セカンダリ側をエントリーモデルにすると言うようにコスト面においてもメリットある機能なので、災害対策という点において非常に有効な手段なのではないかと思います。
Persistent Port |
ONTAP 9.8では、SAN専用ストレージであるASAシリーズに対して、Persistent Portという新しいパス制御が実装されました。
そもそも従来のASAシリーズは、シンメトリック アクティブ-アクティブ構成といい、2ノードに分散された両方のパスをどちらもActiveな最適化パスとすることで、障害時に「切り替え可能なパスをチェックする」というプロセスが必要なくなるため、FAS/AFFシリーズよりも高速にフェイルオーバーすることが可能となっていました。
ONTAP 9.8からは、Activeな最適化パスと同じポート情報(ポート名やポート速度などの設定値)を持つシャドウLIFと呼ばれる通常時はホストから見えないLIFをHAペアであるノードに作成しておくことができます。
片方のノードで障害が発生すると、もう片方のノードにあるシャドウLIFが障害発生したLIFと同じポート情報でホストから見えるようになるため、ホストからは瞬断程度としか認知されず、ポート情報も障害前と変わらないため、フェイルオーバーが発生しません。
また、アクティブなパスの本数も障害前と同じため、帯域幅も変わらることはなく、システムに与える影響をさらに少なくすることが可能となりました。
その他にもASAシリーズに対するアップデートとして、LUNとNVMeの最大サイズが128TB、ボリュームの最大サイズが300TBに拡張されました。
ONTAP 9.8では、NASとしての機能以外にもSANとして注目すべきアップデートが多く含まれていると感じました。
Temperature Sensitive Storage Efficiency(TSSE) |
ONTAPといえば、高いストレージ効率化によるデータの削減を得意としています。
そんな効率化機能にもアップデートがありました。
AFFシリーズに対して実装されたTemperature Sensitive Storage Efficiency(以下:TSSE)という機能です。この機能の特長は、書き込まれたばかりのHotデータを読み取りパフォーマンスに特化した小容量のグループで圧縮し、書き込まれてから時間が経過したデータをColdデータとして、さらに再圧縮するといった部分です。
さらに、重複排除、インラインデータコンパクションといった各効率化機能の実行順徐にも変更がありました。
ONTAP 9.7以前では、ファイル単位で圧縮をした後に重複排除が実行されていましたが、ONTAP 9.8のTSSEでは圧縮の前に重複排除が実行されます。
これにより、ONTAPのファイルシステムであるWAFLで管理されるデータブロック単位(WAFLコンテナ単位)で圧縮が実行されることになります。
ONTAPでは、これをコンテナベース圧縮と呼んでいます。
このアップデートにより、ONTAP 9.7以前よりもストレージの利用効率を向上することに成功しました。
System Manager |
最後にONTAPの管理GUIであるSystem Managerのアップデート情報について解説します。
ONTAP 9.7では、Classic modeと呼ばれるZAPIベースのGUIと今回解説する新しいREST APIベースのGUIが併用できる仕様となっていましたが、ONTAP 9.8からはClassic modeが廃止されたため、REST APIベースのGUIに完全移行しました。
新しいGUIの特長としては、Classic modeと比較してリスト化された情報の列が少なくなっているといったように、よりシンプルで見やすいGUIを提供しています。
また、管理者がストレージの状況を直感的に理解できるような画面も提供されます。
以下は、ハードウェア構成を表示する画面です。
ストレージだけでなく、スイッチやディスクシェルフも表示することができ、問題があるコンポーネントが赤く表示されることで、視覚的に障害部分を確認することができます。
続いて、ネットワーク画面です。
従来のリスト化された画面の他に以下のようなネットワークマップを表示する画面が追加されました。
ストレージ内の全てのネットワーク接続とステータス状況が単一画面で確認できます。
その他にもONTAP自身やファームウェアのアップグレードプロセスが簡素化されたインターフェイスを提供しているなど、管理者にとって使いやすい仕様となっています。
SB C&Sでは、System Managerのマニュアルを提供しています。
気になる方は、本サイトから弊社へお問い合わせください。
※System Managerのバージョンは9.7でREST APIベースのGUIマニュアルになります。
まとめ |
・ONTAPでS3プロトコルが利用可能
・HDDを搭載したFASシリーズでもFabricPoolが利用可能
・SM-BCにより、ビジネス継続性が向上
・Persistent Portにより、コントローラーを抑止
・TSSEにより、ストレージ利用効率がさらに向上
・System Managerでさらに直感的な作業が可能
今回、ご紹介した内容の他に以下の機能についてもアップデートがされています。
・File System Analytics
・FlexCache
・FlexGroup
・SnapLock
・SnapMirror
・SVM DR
・MetroCluster
・Security
・ネットワーク
・Qos for Qtree
・NFS 4.1/4.2
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
河村 龍 - Ryu Kawamura -