【知っておきたい】GitLab最新ブログのご紹介 Part3

本記事では、GitLab公式ブログで公開されている注目の記事2本をご紹介いたします。
Atlassian社がData Centerを終了する中、GitLabは柔軟な導入形態を維持
Atlassian社は「Data Center」製品について、すべてのData Center製品のサポートを2029年3月28日で終了(EOL)すると発表しました。この変更は、オンプレミスや自己管理型インフラに投資してきた多くの企業にとってクラウド・オンプレ・ハイブリッドの3つの導入形態から選ぶ際に検討して導入することが必要であることをGitLabの公式ブログで紹介しています。
※ GitLab社のブログで紹介された内容を簡単にまとめてご紹介します。
GitLabが提示する「選べる導入オプション」とその意義
GitLabは企業のニーズに応じて、以下の3つの導入モデルを提供しています。
- Self-managed(自己管理型)
医療、金融、政府、防衛など、高いセキュリティ要件やデータ主権要求がある組織向け。オンプレミスやエアギャップ環境にも対応。 - Cloud(クラウド版)
運用の手軽さ、スケーラビリティ、管理コスト削減を重視する組織向け。 - Hybrid(ハイブリッド型)
CloudとSelf-managedの「いいとこ取り」。柔軟性とコントロールを両立したい企業に最適。
GitLabでは「すべての組織がクラウド移行を望んでいるわけではない」「規制やレガシー環境の制約がある」という現場の声を紹介しています。
そのような背景から、強制的なクラウド移行ではなく、組織に合わせて導入形態を選べることが大きな価値とされています。
なぜGitLabが注目されるのか
GitLabの強みは選択肢があるだけでなく、移行性や統合性など実用的なメリットが多数あります。
- 統合されたDevSecOpsプラットフォーム
ソース管理、CI/CD、セキュリティスキャン、ドキュメント、アジャイル管理、可視化・分析など、開発に必要な機能を1つのプラットフォームに集約。ツールの分散による管理コストを大幅に削減できます。 - 移行のしやすさ
BitbucketやJiraからの公式インポーターを提供。大規模リポジトリ(例:500 GiB、13,000 PR、10,000ブランチ)も、約8時間で移行が完了した事例があります。 - コスト効率とROIの高さ
GitLabの調査によると、最大483%のROI(3年間)、セキュリティ作業時間を1/5に削減、ツールチェーンコストを25%削減といった効果が報告されています。 - ベンダー依存の軽減
ツールが分散していると連携やアップデート、運用に多大なコストが発生しますが、GitLabはワンストップで完結できるため、運用負荷を大幅に削減できます。
検討すべきタイミングとは?
以下のような組織にとって、今がまさに移行検討の重要なタイミングです。
- 導入製品のサポート切れ
- 機密性の高いデータを扱い、コンプライアンスやデータ主権の確保が必須
- DevSecOps環境をシンプル化し、将来的に拡張可能な基盤を求めている
- 複数ツールの併用による管理・統合コストが増大している
「これからはクラウドに移行するしかない」という思い込みにとらわれず、自社の要件に最適な形を選べるプラットフォームを検討することが重要です。
まとめ
GitLabのブログを読んでみて、「選択肢があることの重要性」を強く実感しました。特に、クラウド移行が必ずしも最適解ではない企業にとって、GitLabのようにオンプレ・クラウド・ハイブリッドすべてを選べるプラットフォームが存在することは非常に心強いと感じます。
また、単に動かせるだけでなく、移行支援ツールやDevSecOpsの統合度の高さなど、企業が実際に運用するうえでの「現実的な使いやすさ」もよく考えられていると感じました。特に、複数ツールを組み合わせて無理やりDevSecOpsを構築している現場にとっては、GitLabの統合アプローチは本当に大きな価値があると思います。
「クラウド一択」ではなく、自社に最適な形を選べるGitLabの良さだと思いました。
【参考ブログ】
Atlassian社がData Centerを終了する中、GitLabは柔軟な導入形態を維持
高度なSASTでより高速かつスマートなスキャンを実現
ソフトウェア開発において、静的アプリケーションセキュリティテスト(SAST)はリリース前にコードの脆弱性を検出する重要な機能です。しかし、従来のSASTには「検出精度」と「実行速度/開発者体験」のどちらかを犠牲にしなければならないという課題がありました。たとえば、スキャンが遅いと開発フローの妨げとなり、結果としてセキュリティスキャン自体が敬遠されがちです。反対にスピードを優先すると、重大な脆弱性の見逃しや偽陽性が増える恐れがあります。
こうした課題を背景に、GitLabでは単なる「SAST」から一歩進めて、スキャンの速度と精度・実用性を両立させる新機能「GitLab Advanced SAST」を提供しています。
今回のブログ記事では、その最新版アップデート内容について紹介します。
Advanced SAST のアップデート内容と主な改善ポイント
GitLabの最新ブログによると、Advanced SASTでは以下の改善が行われ、より高速かつスマートなスキャンが可能になっています。
- スキャン精度の向上とカスタム検出ルールの追加
- 初期状態でGitLabのセキュリティ研究チームによる高精度なルールセットが搭載されています。さらに、ユーザー(組織)側で独自の検出ルールを定義することが可能です。例えば、組織固有の禁止関数呼び出しなどを検出するカスタムルールを追加でき、報告は既存ルールと同じ画面で確認できるため管理も容易です。
- パフォーマンス改善による高速スキャン
- マルチコアスキャン:GitLab Runnerで複数CPUコアを活用することで、スキャン時間を大幅に短縮。
- 差分ベーススキャン:マージリクエスト(MR)で差分となったコードのみスキャンし、大規模リポジトリのスキャン時間を削減。
- アルゴリズム最適化とエンジン強化:従来20分以上かかっていた大規模リポジトリのスキャンが、MRでは10分未満に短縮された事例もあります。
10万を超えるコードベース、数百万回のスキャン実績に基づいた改善で、信頼性と実用性が向上しています。
これらの改善により、開発フローの妨げにならず、セキュリティ検査を「自然な開発の一部」として組み込むことが可能となっています。
従来SASTとAdvanced SASTの違い ― Advancedの価値とは
従来のSAST(例:Semgrepベース)は、単一ファイルや単一関数レベルでの静的解析が基本であり、複数ファイルや関数をまたぐ複雑な脆弱性検出や、実際に悪用可能かのコードフロー把握には限界がありました。その結果、偽陽性(本質的でない問題の検出)や、本来見逃すべき問題の見落としが生じやすく、安定した本番運用には課題がありました。
一方、Advanced SASTはクロスファイル/クロス関数taint-analysis(汚染分析)を行い、脆弱性につながるデータフローを追跡できます。これにより偽陽性が減り、「本当に対処すべき脆弱性」に集中できるようになります。さらにスキャン速度も改善され、開発者にとって「遅くて重いセキュリティチェック」の印象を払拭し、セキュリティを日常の開発ワークフローに統合しやすくなっています。
Advanced SASTが特に向いているチーム・組織
今回のアップデートを踏まえると、以下のような状況やニーズを持つチーム・組織にはAdvanced SASTの導入価値が高いと言えます。
- 大規模リポジトリを持ち、複数ファイル・複数モジュールにまたがる複雑なコードベースを扱っている
- CI/CDを活用し、マージリクエストベースでの高速フィードバックを重視している
- セキュリティチェックはしたいが、開発速度や開発者体験(待ち時間やワークフローの中断)は最小限にしたい
- 独自のセキュリティポリシーやコード規約があり、標準検出ルールだけでは対応しきれないカスタムチェックが必要
- 偽陽性の多さやチェック時間の長さから、従来のSAST導入に苦労していた
上記に当てはまる場合、Advanced SASTは単なる「強力なセキュリティツール」ではなく、「開発とセキュリティを両立するための現実的な選択肢」と言えます。
まとめ
GitLabの今回のアップデートは、単なる新機能追加にとどまらず、「セキュリティを開発者にとって扱いやすくする」という観点で優れた実践例と言えます。
セキュリティは重要ですが、手間がかかるという悩みを持つエンジニアやチームは多いでしょう。しかし、スキャンの速度と精度が両立すれば、その「手間と時間」は障壁になりません。
また、カスタムルールの定義により、各組織のリスクやコーディングスタイルに合わせた最適なセキュリティチェックが可能となり、「汎用的なSASTでカバーできない隙間」を埋めることができます。既存のCI/CDワークフローにほぼ手を加えず導入できるため、導入障壁も低く、まず試してみる価値はあるかと感じました。
【参考ブログ】
高度なSASTでより高速かつスマートなスキャンを実現
関連リンク
GitLab公式ブログ:https://about.gitlab.com/ja-jp/blog/
DevOps Hub GitLab関連ブログ: /devops-hub/blog/gitlab/
この記事の著者:近藤泰介 -Taisuke Kondoh-
SB C&S株式会社
主にデジタルワークスペース実現のためのソリューション展開、案件支援、先進事例の獲得、協働パートナーの立ち上げを経験。
現在は新規事業開発やDevOps・クラウドネイティブに関する提案活動、販売代理店の立ち上げ、
国内外の新規商材発掘(目利き)/調査といったTec Scouting活動に従事。
また、Microsoftを中心としたビジネス領域の調査・プリセールスも行う。
DevOps Hubのアカウントをフォローして
更新情報を受け取る
-
Like on Facebook
-
Like on Feedly