2026.01.07

【イベントレポート】AI Engineering Summit Tokyo 2025

近藤泰介
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2025年12月16日、東京・浜松町コンベンションホールで開催されたAI Engineering Summit Tokyo 2025に参加してきました。
Findy社主催のこの大規模カンファレンスには、国内外からAI活用のトップランナーが集結し、「AIが変えるプロダクト開発の未来」というテーマのもと、AI導入事例や開発プロセス変革、AIエージェント運用の知見など最先端のトピックが共有されました。
AI開発ツールや生成AIの最新動向に触れられるとあって会場は大いに盛り上がりました。

海外の登壇者やお客様には海外の方もおり、AIエンジニアリングは、もはや国内に留まらないグローバルなテーマであり、本イベントがグローバルな知見交換の場にもなっていることを実感しました。

ここからは、セッションやイベントを通じての感想や学びを書いていきます。

AIネイティブプロダクト開発現場のリアル

国内大手の 株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)からは生成AIを前提とした「AIネイティブ」なプロダクト開発体制が紹介されました。
DeNAでは分析・企画・実装・リリースというプロダクト開発のコアサイクルをAIが実施しており、企画段階では生成AIでモック(試作品)を作成するのが標準になっているとのことです。少人数(企画立ち上げ1人、プロトタイプ1~3人、本開発1~5人)でも若手エンジニアがどんどん新規企画を立ち上げられる環境を整え、20~30ものプロダクトを並行開発して高速に検証を回すとのことです。
このように生成AIの活用により、「AIと二人三脚で開発する」スタイルが現実のものとなりつつあります。

ダブルCoE体制と「LegalRikai」が支えるリーガルテックの進化

生成AIの活用が個人の生産性を高める一方で、組織全体でどうAIを浸透させビジネス価値に結びつけるかも大きなテーマとなりました。
リーガルテック企業の 株式会社LegalOn Technologiesの講演では、同社が社内にダブルCoE(Center of Excellence)体制を敷いて全社的にAI活用を推進している事例が紹介されています。
AIコーディング支援ツールなどを導入した結果、個人レベルでは明確に生産性が向上し、ある開発チームではPull Request件数が1.5倍以上に増加、また別のチームでは数万行規模のPoCを1ヶ月以内に形にすることに成功するなど定量・定性の両面で効果が現れたといいます。
しかしながら、機能リリース数や売上・利益といったビジネス成果の指標にはまだ大きな変化がないことも指摘されました。特に組織規模が大きいプロダクトほど、AI活用の効果を出すのが難しい傾向が見られたとのことです。
これらを踏まえ、個人の効率化にとどまらず組織全体のプロセス改善やナレッジ循環が必要であり、AI活用を「組織的な取り組み」へ発展させることの重要性をご講演されました。

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CARTAのAI CoEが挑む「事業を進化させるAIエンジニアリング」

株式会社CARTA HOLDINGS(以下、CARTA)のセッションでは、「みんなが欲しがるもの」は作らないという印象的なキーメッセージが共有されました。
CARTA社内のGenerative AI Labでは、かつて誰もが欲しがる汎用的なAIツールを開発していたものの、外部からGoogleの大型モデル(Gemini)の登場でプロジェクト停止に追い込まれた経験から、「事業固有のニッチな課題に専念する」方針に転換したそうです。
汎用ソリューションはビッグテックに代替されるリスクが高く、本気で競争しない限り勝ち目がない。それよりも自社事業ならではの難問にフォーカスし、そこで独自価値を出すべきとのことをお話されていました。
実際、同社ラボでは AI CoE(社内AI推進組織) 機能による社内基盤整備と、虎の巻的に難易度の高い事業課題に挑むタイガーチーム機能という二軸で取り組みを進めているとのことでした。
この戦略により、汎用ニーズは外部に任せつつ固有で難易度の高い課題解決に社内リソースを集中する棲み分けが明確になっているそうです。

ファッション×AI:「似合う」を届けるためのWEARのAI戦略

本イベントでは各業界におけるAI活用事例も多数紹介され、生成AI/LLMが産業横断で実用段階に入っていることが実感できました。
今回は、ファッション × AI: 大手アパレルECの ZOZO, Inc.(以下、ZOZO)の発表を紹介します。
ZOZOの自社ファッションコーディネートサービス「WEAR」でのAI活用事例を発表では、ZOZOはユーザーが抱く「自分に似合う服が本当に見つかるのか?」という不安に応えるため、AIによるバーチャル試着機能を開発しており、ユーザーの写真を元に様々な服を着た合成画像を提示しつつ、そのコーディネートの似合う理由を文章で説明することで、視覚と言語の両面から納得感を高めるシステムを提供してます。
実際のデモでも登壇者が別人のように次々と異なる服装に変わる画像が披露され、会場から驚きの声が上がりました。ファッション×AIの可能性を感じさせる事例であり、「似合う」を科学する新たな挑戦に注目したいと思います。

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全体的なセッションなどを通じて

AIを取り入れる体制づくり

会場やセッションでは、「全社横断でAI活用を展開していくか」といった、「AIを使うかどうか」ではなく「どうやって全社的にAIを運用・定着させるか」に議論の軸が移っていることが伺えました。
AIは単なるツールではなく組織文化や働き方を変革するドライバーになりつつあり、実際、イベントでは繰り返し「AIが開発チームの一員として機能し始めている」というメッセージであり、エンジニア組織としても受け身ではなく能動的にAIを取り入れる体制づくりが求められていると感じました。

最新フレームワーク&LLMOpsツールによるAIエージェント活用

今年は生成AIエージェント元年とも言われ、AIエージェントの構築・運用も大きなテーマでした。

今から取り組める最新AIツール群が紹介され、定番フレームワークを使えばシンプルなコードでエージェントを実装でき、非エンジニアにも扱いやすい内製開発が可能になるとのことをご紹介してしていました。
加えて、構築したエージェントを運用・評価するための「LLMOps」ツールとして、これからはエージェントが生成するログやメトリクスを収集・可視化し、継続的な改善に役立てるためのツールであり、単に作って終わりでなくきちんと評価・改善しながら運用する枠組みができることもご紹介されていました。

AIセキュリティとガバナンスへの関心

AIがソフトウェア開発を加速させる一方で、セキュリティやガバナンス(統制)の重要性についても語られました。
「AIがコードを書く世界でセキュリティレビューはどう変わるか」というテーマでは、AIがコードを大量生産できるようになると、そのスピードと安全性をどう両立するかが課題となります。人間のコードレビューでは対応しきれないスケールの変更をAIが提案するようになったとき、従来以上に自動セキュリティチェックやAIによる脆弱性診断などを活用し、人間はより設計レベルでのレビューやガイドライン策定に注力する必要がある。ということをお話しされていました。
今後はますます、AI活用には組織の開発プロセスやレビュー体制そのものの成熟が求められると感じました。

まとめ

AI Engineering Summit Tokyo 2025は、AIが単なる効率化ツールの域を超えて開発チームの一員として機能し始めていることを強く印象づけるイベントでした。

本イベントを通じて、一番痛感したのは、自分は最新事情を把握している「つもり」になっていただけで、実際には認識が甘かったということです。日々AIを業務で使っているとはいえ、現場の最前線では想像以上のスピードで技術と実践が進んでいました。しかし、そのギャップに気付けたこと自体が大きな収穫であり、非常に刺激的な体験となりました。

AI技術はこれからも進化を続けるかと思います。その都度、私たちの役割や働き方も変わり続けるかと思います。
だからこそ「常に学び、変化を受け入れ、AIと共創していく」姿勢が大切だと感じました。
今後もこのようなイベントに参加し、最前線の熱量に触れることで、新たな発想やモチベーションが得ながら、AIエンジニアリングの動向をウォッチしていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


関連リンク

イベント公式ホームページ:AI Engineering Summit Tokyo 2025

この記事の著者:近藤泰介 -Taisuke Kondoh-

SB C&S株式会社
主にデジタルワークスペース実現のためのソリューション展開、案件支援、先進事例の獲得、協働パートナーの立ち上げを経験。
現在は新規事業開発やDevOps・クラウドネイティブに関する提案活動、販売代理店の立ち上げ、
国内外の新規商材発掘(目利き)/調査といったTec Scouting活動に従事。
また、Microsoftを中心としたビジネス領域の調査・プリセールスも行う。


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