今すぐやめて!AIが正しく読み込めないExcelデータ3選と対処法
SB C&S株式会社 AI推進室の津川です。
データサイエンティストとして社内外へ向けたAI活用の支援業務を進めております。
そんな中で、「AIを導入したけれど、期待した結果が出ない」という声を多く耳にします。
その原因の大半は 「データ整備不足」 にあります。
AIの文脈でよく使われる言葉に「Garbage In, Garbage Out(ガベージイン・ガベージアウト)」という言葉があります。
これは 質の悪いデータをAIに入れてしまうと、どんなに優れたAIをもってしても質の悪い結果しか返さない という意味です。
つまりAIを最大限に活用するには、まず入力するデータを整えることが最重要事項なのです。
そこでこの記事では、業務でよく使われる Excelデータ に焦点を当て、AIが正しく読み込めない典型的な「悪いデータ例」とその解消方法をご紹介します。
また、AIのためのデータ講義シリーズの第0回イントロダクションの紹介記事はこちらとなります。
AIが読み込めないExcelデータ3選
本動画では、AIに入力をすることで精度を下げてしまうExcelデータのうち、実務で特によく見かけるもの3つに焦点を当て、対処法と併せてご紹介しています。
① セル結合されたシート
例)
これは業務の現場でとても頻繁に見かける上に、質の悪いデータの代表格です。
見た目を揃えるためにExcelでよく使われる「セル結合」ですが、AIやシステムにとっては大きな障害になります。
対処法:セル結合解除 + 空白セルの補完
セル結合は基本的に「解除する」が基本戦略です。
そしてセル結合を解除すると、解除されたセルは左上のセルに値を残して空白セルとなります。
そのため以下の手順に沿ってセル結合の対処を行う事で意図通りの内容を残しつつ、AIおよび機械が解釈しやすいデータを作ることができます。
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ホーム>セル結合を解除
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「ジャンプ機能(Ctrl+G → セル選択 → 空白セル)」を使って空欄を選択
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数式で上のセルを参照(=でアクティブなセルを選択)して一括入力(Ctrl+Enter)
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必要に応じて「値貼り付け」で数式を値に変換
こうすることで、機械可読性の高いデータに整形できます。
② セル内で改行されたデータ
1つのセルに複数行の情報が入っているケースも要注意です。
例)
これも結構実務でよく見るパターンです。
Excelではセルの値を編集する際に、Alt+Enterを押下することで改行をすることができます。これを使って、上記の例では同じ注文番号1では「りんご・みかん・バナナ」の3つの商品が売れていて、各商品ごとに担当者および備考がそれぞれ該当している、ということを表現しているようです。
一方でこのように1セルに詰め込まれていると、AIはデータ構造を意図通り理解できず「ハルシネーション(誤回答)」の原因になります。
対処法:Power Queryでデータ分割
こういったセル内で改行されたデータはPower Queryを使って対処する事をおすすめしています。
下記の手順に沿ってデータを分割することで、改行されたデータを適切なテーブルデータに変形する事が出来ます。
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データを「テーブルとして読み込み」し、Power Queryエディターを開く
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「列の分割」→「区切り記号」→「改行コード」で分割
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分割後の列を整理(商品名・担当者・備考などにまとめ直す)
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「ピボット解除」で1行ごとに展開
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余計な列・空白を削除して整形
Power Queryを使うことで、複雑なセル内改行データもスッキリ整形できます。
③ 欠損値(空白とゼロが混在するシート)
これも実務でよく見るデータの一つです。
数値データで「0」と「空白」が混ざっていると、AIが「これは本当にゼロなのか?データ入力漏れなのか?」と判断できません。
このようなデータの持ち方をすると分析結果に大きな影響を与え、意図通りでない動作を起こす要因となってしまいます。
対処法:ジャンプ機能(Ctrl+G)で一括入力
こういったデータについてはジャンプ機能を使う事で効率良く変換しましょう。
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「販売数」や「在庫数」など、明らかに空白=ゼロと判断できる列では空白セルを一括選択して「0」を入力
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「備考」など文字列の空白には「-」や「(記入なし)」など入力不備でない事を示すマークを入れる
ただし注意点として、空白が「入力漏れ」なのか「本当にゼロ」なのかなどは必ずデータ作成者に確認してください。
安易に適切でない値を入力してしまうことで、誤った分析につながる可能性があります。
(特に機械学習などで使用する場合は、空白であること自体が意味を持っていないかなど慎重な判断をすることをお勧めします。)
まとめ:AI活用は「データ整備」から
本記事では、AIが読み込みに失敗する典型的なExcelデータとその対処法を紹介しました。
詳しく知りたい方はぜひ動画の方も見てみてください。
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セル結合は解除して、空白を補完する
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セル内改行はPower Queryで展開する
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欠損値は文脈に応じて補完する
AIの精度は「どんなデータを渡すか」で全て決まると言っても過言ではありません。
「Garbage In, Garbage Out」を避けるために、ぜひ日々のデータ整備を意識してみてください。
👉 あなたの現場のExcelはAIに優しいデータになっていますか?
今後も「AIが喜ぶデータ活用術」を発信していきますので、ぜひチェックしてみてください。
著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 先端技術統括部 DXコンサルティング部 デジタルイノベーション課
津川 聡