
みなさま、こんにちは。植木です。
前回の記事に続いて今回は、「Maestro」の詳しい使い方についてご紹介します。
ご参考にしていただけますと幸いです。
※他の記事はこちら
【UiPath Agents】Maestro の機能紹介
目次
1.Maestro の使い方
ここでは、以下のシナリオを利用して実際に Maestro でプロセスを作成します。
◆サポート窓口の返金対応プロセス
1.顧客から返品申請を受領
2.申請内容を確認し、不備があれば顧客へ連絡、不備がなければAIエージェントで返金対象か判定
3.返金対象外の場合は顧客へ連絡、返金対象の場合は会計チームへ連絡
4.会計チームの返金処理後、返金処理結果を顧客へ連絡
※注意
Maestro はSaaS製品との連携機能を強みとしており、これを活用することで効率的な運用が可能です。
しかし、セキュリティポリシーや環境の制約によりSaaS製品との連携が難しい場合もあることを考慮し、
本記事ではSaaS製品と連携を行う箇所は、動作確認用のRPAに置き換えて解説を行います。
(例:「メール送信」が発生する箇所を、Studio Web で作成したログ出力を行うRPAに置き換えるなど)
1-1.準備
本記事では作成済みのワークフローやAIエージェントを使用します。
1.【AIエージェントのデプロイ】
【手順】
1.コンテキストグラウンディングの設定
以下の「返金規定サンプル.pdf」をダウンロードし、
以下の記事を参考に、コンテキストグラウンディングの設定を行ってください。
※リンクを右クリックしてファイルを保存してください
【ファイル】: 返金規定サンプル.pdf
【記事】: 【UiPath Agents】Agent Builder を使ったAIエージェントの作り方 ー 4-2. AIが参照する返金規定の設定
2.ソリューションパッケージ(AIエージェント)のアップロードおよびデプロイ
以下のソリューションパッケージをダウンロードし、
以下の手順で、アップロードおよびデプロイを行ってください。
(個人でテストする場合、アップロード先は個人用ワークスペースで大丈夫です)
【ファイル】: Refund_test-1.0.1.zip
※本AIエージェントの詳細は以下の記事をご参照ください。
【参考記事】:【UiPath Agents】Agent Builder を使ったAIエージェントの作り方
【手順】
①(個人でテストする場合)Orchestrator の「My Workspace」を選択し、
「ソリューション」 > 「パッケージ」 の順に選択し、
「ソリューションパッケージをアップロード」をクリック
②「Refund_test-1.0.1.zip」をアップロード
③アップロードが完了したことを確認し、
「パッケージをデプロイ」ボタンをクリック
④「deploy-modal.dialog_review」をクリック
⑤「Internal documents」(Refund_test-1.0.1.zip に設定されている既存のインデックス)を選択し、「Storage Bucket」を「手順1.コンテキストグラウンディングの設定」で新たに作成したストレージバケットに変更し、「検証」・「デプロイ」を順番に実行
⑥デプロイが完了したことを確認し、「⋮」から「デプロイをアクティブ化」を選択
⑦「このリンクを~」の文字列をクリックし、処理が正常終了したことを確認し、デプロイのアクティブ化を実行
2.【アクションアプリのデプロイ】
Apps で作成したAction Center 用のアプリをデプロイします。
以下の2つのファイルをダウンロードし、
以下の記事を参考に、デプロイを行ってください。
※リンクを右クリックしてファイルを保存してください
ファイル① 申請内容確認: Maestro_申請内容確認.uiapp
ファイル② 返金処理: Maestro_返金処理.uiapp
【参考記事】: 【UiPath Agents】Agent Builder を使ったAIエージェントの作り方 ー 4-3.エスカレーション用アプリの作成 ー 【補足:Appsファイルのダウンロード】
3.【RPAワークフローのパブリッシュ】(SaaS製品との連携ができない場合にご利用ください)
Studio Web で作成した動作確認用のRPAをパブリッシュします。
以下のファイルをダウンロードし、
以下の手順でパブリッシュを行ってください。
【ファイル】: Maestro_返金処理プロセス_動作確認用.uip
※ログ出力を行うのみのフローです。
【手順】
①Studio Web を開き、新規作成の「▼」ボタンをクリックし、
「インポート」を選択し、ダウンロードしたファイルをインポート
②インポートされたワークフローを開き、パブリッシュを行う
1-2.開発
タスクやイベントを設定しながら、プロセスを開発します。
【手順】
1.UiPath Studio Web を開き、新規作成から「エージェンティック プロセス」を選択
2.画面左側のアイコン一覧から「参加者」を選択し、ドラッグ&ドロップで追加
3.参加者(プール)を選択し、「レーンの分割」アイコンをクリック
4.プールの名前を設定(プールとレーンの選択を間違えやすいのでご注意ください)
■プール名: 通販事業部
5.2つのレーンの名前を以下の通り設定
■上のレーン: サポート窓口
■下のレーン: 会計チーム
6.サポート窓口のレーンに「タスク」を追加し、
「アクションアプリタスク」(アクションセンターのタスク)を設定
※今回はテスト実行のため、担当者を自分にします
■名前: 申請内容確認
■アクション: アクションアプリタスクを作成
■アクションアプリ: Maestro_申請内容確認
■タスクのタイトル: 申請内容確認
■担当者: 自分のアカウント
7.排他的ゲートウェイとタスクを2つ追加して、接続する
(開始イベントや他のタスクも接続してください。以降の説明では接続の手順は省略します。)
8.以下の通り、分岐条件を設定
【上の分岐】
■ラベル: 不備あり
■条件: vars.selectionResult == "不備あり"
※ "vars.selectionResult" は、変数「Selection_result」になります。
※この変数は、アクションアプリ「Maestro_申請内容確認」の出力引数で、
タスクにアクションアプリを設定すると自動的に追加されます。
【下の分岐】
■ラベル: 不備無し
■条件: vars.selectionResult == "不備無し"
9.不備あり(上側のタスク)に、申請内容の不備を連絡するアクションを設定
■名前: 申請内容の不備連絡
■アクション: RPAワークフローを開始して待機
■オートメーション: Maestro_返金処理プロセス_動作確認用
■Input(入力引数): selection_result
■2025/6/25 追記
※補足:個人用ワークスペース以外のRPAを利用する場合
個人用ワークスペースフィード以外に追加されているRPAを利用する場合は、
対象フォルダで無人実行ができるよう事前に設定してください。
設定されていない場合、RPAを実行できずエラーになります。
設定①:アクセス権を管理
ロボットの種類が、"Unattended" に設定されているアカウントが一つ以上必要です。
種類はユーザーアカウントでもロボットアカウントでも問題ありません。
設定②:マシン
無人実行に対応しているマシンの割り当てが必要です。
(下図は、"Cloud ロボット - サーバーレス" を利用した一例です)
10.不備無し(下側のタスク)に、AIエージェントを実行するアクションを設定
■名前: AIエージェント実行
■アクション: エージェントを開始して待機
■エージェント: Refund_Agent
■入力引数:
・in_order_date: order_date
・in_product_name: order_product_name
・in_return_reason: return_reason
・in_order_number: order_number
11.排他的ゲートウェイを追加し、タスクを2つ追加し、返金対象外と返金対象の条件分岐を設定
【上の分岐】
■ラベル: 返金対象外
■条件: vars.escalationResult == "返金対象外"
※返金対象外の場合はAIエージェントでエスカレーションが発生するため、
変数「Escalation_Result」を使います。
【下の分岐】
■ラベル: 返金対象
■条件: vars.aiJudgeResult == "返金対象"
※返金対象の場合はエスカレーションが発生しないので、
変数「AI_Judge_Result」を使います。
12.返金対象外(上側のタスク)に、返金対象外の連絡をするアクションを設定
■名前: 返金対象外の連絡
■アクション: RPAワークフローを開始して待機
■オートメーション: Maestro_返金処理プロセス_動作確認用
■Input(入力引数): escalation_result
13.返金対象(下側のタスク)に、返金手続きの連絡をするアクションを設定
■名前: 返金手続きの連絡
■アクション: RPAワークフローを開始して待機
■オートメーション: Maestro_返金処理プロセス_動作確認用
■Input(入力引数): AI_judge_result
14.会計チームのレーンにタスクを追加し、返金処理の 「アクションアプリタスク」を設定
※今回はテスト実行のため、担当者を自分にします
■名前: 返金処理
■アクション: アクションアプリタスクを作成
■アクションアプリ: Maestro_返金処理
■タスクのタイトル: 返金処理
■担当者: 自分のアカウント
15.サポート窓口のレーンにタスクを追加し、返金処理結果の連絡を行うアクションを設定
■名前: 返金処理結果の連絡
■アクション: RPAワークフローを開始して待機
■オートメーション: Maestro_返金処理プロセス_動作確認用
16.終了イベントを追加し各連絡タスクと接続
1-3.テスト
開発したプロセスが想定通り動くかテストします。
【ケース①】:申請不備があるとき
1.「テスト」ボタンをクリックして実行開始
2.申請内容確認のステップをクリックし、「アプリタスクを開く」を選択
3.Action Center が開くので、今回は「不備あり」を選択
(返品理由は何でも大丈夫です)
4.「申請内容の不備連絡」タスクを通り、終了イベントに到達することを確認
【ケース②】:申請不備なしで、「返金対象外」のとき
1.再度テストを実行し、同様の手順でアプリタスク(Action Center)を開き、
返品理由で「開封済み~」を選択し、「不備無し」を選択
2.AIエージェントのエスカレーションが実行されたことを確認し、
エスカレーションのアプリ(ここでは「Refund_confirm」)のステップをクリックし、
「taskUrl」のURLを「Ctrlキーを押しながらクリック」
3.Action Center が開くので、今回は「返金対象外」を選択
4.返金対象外の連絡タスクを通り、終了イベントに到達することを確認
【ケース③】:申請不備なしで、「返金対象」のとき
1.再度テストを実行し、同様の手順でアプリタスク(Action Center)を開き、
返品理由で「未開封~」を選択し、「不備無し」を選択
2.(エスカレーションが発生した場合) 「返金対象」ボタンをクリック
3.「返金手続きの連絡」タスクを経由し、
「返金処理」タスクまで到達したら、タスクを選択して「アプリタスク」を開く
4.「送信」ボタンをクリック
5.返金処理結果の連絡タスクを通り、終了イベントに到達することを確認
2.さいごに
前編・後編に分けて、Maestro の概要と使い方についてご紹介しました。
Maestro は、AI・ロボット・人間を統合し、
複雑なビジネスプロセスを効率的かつ統制された方法で管理・最適化するプラットフォームです。
これにより、組織はプロセス全体を把握し、
継続的な改善を通じてパフォーマンス向上やビジネス成果の最大化を実現できます。
さらに、関係者間の連携を強化し、信頼性やガバナンスを向上させることで、組織の成長を加速させます。
業務の信頼性向上・効率化を後押しするツールとして、ぜひご活用いただけますと幸いです。
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植木 真